今やほぼすべての車に備わっている安全装置、 ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)。取説にはこんな感じで説明されています。
注意事項として「ABSは必ずしも制動距離を短縮する装置ではありません。」と説明されています。もし、「ABSは制動距離を最大限短縮します」のように説明してしまうと、砂利道や段差などレアケースで制動距離が伸びて事故に至ってしまった場合にメーカーが責任を問われてしまうので、免責としてこのように説明をせざるを得ない訳です。しかしこれを次のように理解してしまっている人がいますが、間違いです。
- ABSは制動力を犠牲にしてハンドルが効くようにする装置
- ABSが作動すると大抵の場合で制動距離が伸びる
正解は次の通り。
- ABSは制動力を犠牲にせずハンドルが効くようにする装置
- ABSが作動すると大抵の場合で制動力が最大限発揮される
取説の記述「ABSは必ずしも制動距離を短縮する装置ではありません」の裏を返すと、「ABSは大抵の場合で制動距離が短縮される装置」、ということなんです。当然タイヤの能力以内ですが。
タイヤが最大限の制動力を発揮するのはスリップ率20%前後。ABSはスリップ率20%前後になるよう、1秒間に約30サイクルという超高速で制御します。ABS無しの車でこのレベルのコントロールが出来るのはほんの一握りの人だけ。しかもこれを4輪独立でやるので、たったひとつのペダルではどんな達人でもかなうはずがありません。ABS付きであれば私たちドライバーはブレーキペダルをただ強く踏み込むだけで理想に近いフルブレーキができてしまいます。ただ、いざという時にこの「ただ強く踏み込むだけ」が出来ない人がかなり多いらしいですね。
「ABSが作動すると車の安定性が確保される」というのは正しいのですが、普段と同じようにハンドルが効く訳ではありません。ブレーキの踏み方が甘ければハンドルはよく効きますが、きっちり強く踏み込んでいればABS付き車両でもハンドルはほとんど効きません。ハンドルを効かせたかったらブレーキを少し緩める必要があります。
レアケースで制動距離が伸びる、つまり踏んでも全然止まらない状態になった場合は一瞬ブレーキを離して踏み直す操作が有効です。ただ、そもそも路面のμが低いからブレーキが効かないのか、ABSの誤作動なのかを瞬時に見極めて的確な操作を一瞬で行わなければいけないので、一般向けには難しいと思います。判断や操作が悪いと、かえって制動距離を伸ばしてしまう羽目になってしまいます。
だから緊急時のブレーキは「とにかく最後まで思い切り踏み込み続けろ」とアドバイスされるのです。



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